飲酒運転で事故を起こしたため懲戒解雇した従業員に、最後の給料を支払う必要はありますか?
更新日:2021.05.28
ご質問:
従業員が飲酒運転の上に交通事故を起こしてしまいました。地元のテレビニュースや新聞でも報道され、当社にも取材などが来て迷惑を被りました。
このような危険な行為をしたことは到底許すことができず、当社の就業規則の手続きを経て、その従業員を懲戒解雇としました。
その後、その従業員から、懲戒解雇までの最後の給料を払ってほしいとの連絡を受けました。当社としては、当社の評判に傷をつけたような従業員に払いたくありません。無視しようと思っていますが、問題あるでしょうか。
回答:
結論としては、退職までの給料で未払いの部分は払わなくてはいけません。
使用者(会社など)と従業員の関係は雇用契約であり、従業員が労働力を提供し、使用者がその対価として給料を払う関係にあります。従業員は、退職まで労働力を既に提供済みであるので、使用者は、その対価を払う義務があります。
飲酒運転・交通事故で会社が迷惑を被ったことから払いたくないという感情はある程度理解できますが、それは別の問題であり、懲戒解雇という手続きで処理しています。そのことで、上記の給与支払い義務が無くなることはありません。
なお、従業員の行為により使用者が損害を被った場合に、使用者は、従業員に損害賠償請求をすることができる場合があります。その場合でも、会社が一方的に未払いの給与から差し引くことはできません。このことについては、別の記事で解説していますので、そちらをご覧ください。
<従業員の給料から従業員の不注意による社用車の修理代を天引きしても問題ないでしょうか?>
なお、余談ですが、今回のように従業員の飲酒運転・交通事故で取材を受けたり、評判に影響を与えたという迷惑については、具体的にどの程度の迷惑で、どのくらいの損害かを試算することも立証することも難しいものです。そのため、損害賠償請求が法的には認められない可能性があります(ケースバイケースとなります)。
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1970年生 / 札幌弁護士会(55期)
2007年4月 アンビシャス総合法律事務所 設立
2008年6月 日本弁護士連合会外国弁護士及び国際法律業務委員会委員(~2014年5月)
2009年5月 北海道情報公開・個人情報審査会委員
2011年1月 (財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター専門家相談員就任
2011年8月 北海道税務・事業再生実務者ネットワーク世話人就任
2012年6月 札幌市公文書管理審議会委員(~2016年5月)
2014年4月 北海道知的財産戦略本部幹事
2014年4月 日本知的財産仲裁センター北海道支所長
2014年5月 日本弁護士連合会知的財産センター委員
2016年3月 北海道曹達株式会社社外取締役就任
2016年4月 札幌弁護士会知的財産権委員会委員長
重点取扱分野:知的財産(特許法・著作権法・不競法)・IT、M&A・事業承継、労働問題、事業再生・倒産、リスクマネジメント
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