競業する会社の取締役に就任していることが発覚した従業員に対して、聞取り調査を行う権限はないのでしょうか。また、当該従業員には、調査に応じる義務はないのでしょうか。
更新日:2022.03.17
ご質問:
当社の就業規則では、従業員の副業を禁止しているのですが、ある従業員が当社と競業する会社の取締役に就任していることが発覚しました。当社は、当該従業員に懲戒処分を下すかを判断するために、聞取り調査を行おうとしたのですが、当該従業員は、「聞取りに応じる義務はありません」と開き直っている様子です。当社には、当該従業員に聞取り調査を行う権限はないのでしょうか。また、当該従業員には、当社の聞取り調査に応じる義務はないのでしょうか。
回答:
使用者には、従業員が違反行為を行ったかを調査する権限があり、違反行為を行った従業員には、使用者の調査に協力する義務があります。
まず、使用者は、企業秩序を維持するために、従業員が企業秩序に違反する行為を行った場合には、懲戒処分を下すことができます。
そして、使用者が従業員に懲戒処分を行うためには、懲戒事由の該当性を確認する必要があります。
そのため、使用者は、従業員が行った違反行為の内容、態様、程度等を明らかにするために、事実関係の調査を行うことが可能です(最判昭和52年12月13日)。
他方、使用者の調査対象となる従業員が違反行為を行った本人である場合には、当該従業員には、使用者の調査に協力する義務があります。 ただし、使用者の調査が嫌がらせ目的である場合には、従業員には、調査に協力する義務はないと考えられています。
就業規則・社内規程等に関する労務等、いつでもお気軽にご相談ください。

1989年生 / 札幌弁護士会所属(69期)
2016年12月 アンビシャス総合法律事務所 入所
重点取扱分野:M&A / 事業再編 / 労働問題
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