仕事の事務能力や素質も足りないと考えており、試用期間の途中ですが、本採用を拒否し、当該従業員を解雇することができますか。
更新日:2020.05.22
ご質問:
当社の就業規則では、試用期間を3カ月と定めています。当社は、最近人手不足であったため、試用期間を設けて新しい従業員を採用しました。しかし、当該従業員が入社してから約1カ月が経ちましたが、性格が暗いため同僚とはなじめておらず、仕事の事務能力や素質も足りないと考えており、当社としては、試用期間の経過を待たずに従業員としての適格性を欠いているものと判断しています。試用期間の途中ですが、本採用を拒否し、当該従業員を解雇することができますか。
回答:
多くの企業では、社員を採用するに当たり、数カ月程度の試用期間を定め、期間満了後、従業員としての適格性を欠く場合には、解雇(本採用の拒否)できる旨の規定を就業規則などに定めているかと思います。
試用期間は、従業員の資質、性格、能力等を把握し従業員としての適格性を判断するための期間を労使間で合意したものですので、原則として、試用期間の途中で、適格性なしと判断して解雇することは、使用者において、従業員の同意なく試用期間を短縮するに等しく認められません。
試用期間の満了を待つことなく、解雇できるのは、就業規則等にその旨の規定があるか、試用期間の満了を待つことまでもなく従業員の資質、性格、能力等を把握することができるような特段の事情があることが必要です。たとえば、当該従業員が横領行為等を行ったり、就業規則に違反する行為を重ねながら反省するところがない等のいった事情が必要となります(ニュース証券事件・東京高等裁判所平成21年9月15日・労判991号153頁参照)。
ご質問のケースでは、試用期間はあと2カ月残されており、残りの期間内で指導・教育によって職務能力の向上が期待できる可能性は否定できないものと考えられます。そのため、ケースバイケースではありますが、明らかに従業員としての適格性が欠けていると把握できるような特別の事情がない限り、解雇は無効と判断される可能性が高いものと考えます。
裁判例(医療法人財団健和会事件・東京地方裁判所平成21年10月15日・労判999号54頁)においても、試用期間を3カ月とした場合に、改善の見込みが全くないとはいえないにも拘わらず、20日間程度の試用期間を残して、事務能力の欠如を理由としてなした本採用拒否は「客観的に合理的理由を有し社会通念上相当であるとまでは認められない」として無効と判断したものもありますので、ご参照下さい。
当事務所の業務の中心は企業法務です。企業法務の中でも労務関連分野は、法律の制定や改正、経済の動向や社会情勢の変化の影響を受けやすいため、最新の事例を踏まえた柔軟な対応を求められます。
当事務所の弁護士や社会保険労務士、司法書士は、労務分野の諸問題に積極的に取り組んでいます。
何らかのトラブルや問題を抱えておられる方は、いつでもお気軽にお問合せください。
よく読まれている記事
まだデータがありません。