試用期間中の従業員について、仕事の能力不足を理由に本採用を拒否でるか。
更新日:2025.06.05
ご質問:
当社の就業規則では、試用期間を3か月と定めています。
当社は、最近人手不足であったため、試用期間を設けて新しい従業員を採用しました。当該従業員が入社して約1か月が経ちましたが、性格が暗いため同僚とはなじめておらず、仕事の事務能力や素質も足りません。そのため、当社としては、試用期間経過後に本採用を拒否したいと考えています。
試用期間中の従業員について、能力不足や不適格性を理由に本採用を拒否できるのでしょうか
結論:
能力不足や不適格性を理由に本採用を拒否することは難しいと考えられます。
解説:
日本では、就業規則において、労働者の採用時に1か月ないし6か月程度の試用期間を置き、試用期間中の勤務状況等を踏まえて適格性を欠くことが明らかになった場合には、本採用を見送る旨の規定を定めることが多い印象です。
三菱樹脂事件(最大判昭48・12・12民集27巻11号1536頁)は、試用期間中は解約権留保付きの労働契約が成立しているとして、本採用拒否は、留保された解約権の行使に当たるため、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当として是認できる場合にのみ許されると判断しました。
本採用拒否については、能力不足や不適格性の判定について、通常の解雇よりも広い判断が認められると考えられているものの、日本軽金属事件(東京地判平44・1・28労民集20巻1号28頁)では、新入社員の遅刻、誤字脱字、暴言、命令不服従など教育によってたやすく矯正しうる欠陥を何ら矯正することなく本採用拒否することは許されないと判断しています。また、にいよんろく設計事件(東京地判平27・1・28労経速2231号19頁)は、設計の専門技術者として中途採用した労働者について、設計業務への適性を欠くとして本採用を拒否した事案について、試用期間中に判明した事実には解雇を相当とする能力不足や勤務態度不良は認められないと判断しています。
このように、指導教育によって矯正が見込まれるような場合や、試用期間中に新たに判明した能力不足とはいえない場合などは、本採用拒否が相当ではないと判断されています。そのため、単に能力不足や不適格性のみを理由に本採用を拒否することは難しいと考えられます。
本件の事案では、能力不足や不適格性について、矯正が見込まれるか否かを検討していない段階かと思われますので、この段階で能力不足や不適格性を理由に本採用を拒否すると、それを無効と判断される可能性が高いと思われます。

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