就業規則を変更して、会社の業績や個人の成果と直接結びつく成果主義型の給与にすることについて注意すべき点はありますか。
更新日:2021.06.19
ご質問:
当社では、基本給の中に職能給という項目を設けています。従前の就業規則では、年功序列型でしたが、この度、就業規則を変更して、会社の業績や個人の成果と直接結びつく成果主義型の給与に変更することを考えています。このような変更について注意すべき点はありますか。
回答:
本件のように、労働条件を画一的に変更する方法として、就業規則を変更することは一般的に行われます。
但し、就業規則を変更することについては、その変更が有効か無効かということが問題になることがあります。労働契約法では「使用者は、労働者と合意することなく就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない」(同法9条本文)と規定されています。
そこで、就業規則によって変更しようとしている労働条件が、労働者にとって不利益になるか否かを見極める必要があります。このような不利益性の有無の判断方法については、法律上の明文はありませんが、裁判所は、新旧の就業規則を外形的に比較し、不利益性の有無を形式的に判断する傾向にあります。
質問のケースと同様に、就業規則の変更によって成果主義型の賃金制度を導入した事案で、裁判所は、新賃金制度の導入後、人事考課査定の結果の結果、賃金が旧賃金制度の下で支給されていた額よりも減少する可能性があることを捉えて、このような「可能性が存在する点において、就業規則の不利益変更にあたる」と判断しました(東京高判平18年6月22日労判920号5頁)。
このように、就業規則の変更によって、労働条件のある部分について労働者に不利益が生じる場合、もしくはその可能性がある場合には、裁判所は広く変更が不利益であると判断すると考えられます。
以上のことからすると、質問のケースにおいても、就業規則変更の不利益性が認められると考えられます。そのような場合、①就業規則の変更に合理性があり、かつ、②変更後の就業規則が労働者に周知されていることが必要となりますが(労働契約法10条)、この点についての詳細は別の項目で解説します。
就業規則の作成・変更による労働条件の変更に関する労務等、いつでもお気軽にご相談ください。
1984年生 / 札幌弁護士会所属(66期)
2013年12月 アンビシャス総合法律事務所 入所
重点取扱分野:事業再生 / 倒産
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