退職した従業員から従業員のタイムカード一式のコピーを出すように要求されています。このような要求に応じなければいけないのでしょうか。
更新日:2020.04.09
ご質問:
退職した従業員が弁護士を依頼し、未払残業代を請求するとの書面を送ってきました。その従業員のタイムカード一式のコピーを出すように要求されています。このような要求に応じなければいけないのでしょうか。
回答:
法律上、タイムカードなどの労働時間を記録した資料を、従業員に開示しなければならないということは定められていません。したがって、法的には、開示義務まではないといえますが、開示を要求された場合には、会社(使用者)は開示に応じるべきです。
「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。」(労働基準法第32条1項)などの法令を守るために、使用者は、労働者の労働時間を管理しなければなりません。そして、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(厚生労働省)では、「使用者は、労働時間を適正に管理するため、労働者の労働日ごとの始業・ 終業時刻を確認し、これを記録すること。」として、その方法としてタイムカード、ICカード等の客観的な記録を残すことを求めています。
そして、使用者は、このような記録を三年間保存することが義務付けられています(労働基準法第109条)。
労働者が自らの残業代等を確認するためには、タイムカード等の記録を確認する必要があります。
法律上、タイムカード等の開示義務が定められていないからといって、開示要求を拒絶してしまうと、タイムカード等が使用者にとって都合の悪い資料であるとの疑いをもたれてしまいます。そして、もし裁判等に発展した場合、裁判所からは提出を示唆されますし、拒んだ場合にはその態様は使用者に不利な印象を抱かせるだけです。
また、タイムカードの開示義務を認めた裁判例もあります(大阪地方裁判所平成22年7月5日判決)。
使用者としては、タイムカードの開示を拒むことは、不利に働くだけですので、開示を要求された場合には応じるべきでしょう。
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