元従業員が、訴訟において、解雇が無効であることの確認と、解雇以降の期間の賃金の支払を請求しています。本当に解雇以降の期間の賃金を支払わないといけないのでしょうか。
更新日:2021.07.01
ご質問:
当社は、2年ほど前に、ある従業員を解雇しました。その従業員は、後に弁護士に依頼し、当社に対し、訴訟を起こしました。その従業員は、訴訟において、解雇が無効であることの確認と、解雇以降の期間の賃金の支払を請求しています。当社も、弁護士を雇って対応しているのですが、先日、弁護士から、「裁判所は、解雇を無効と考えているようである。そうすると、解雇以降の期間の賃金を支払わなければならなくなる可能性がある」と説明を受けました。その従業員は、解雇後、当社で働いてもいないのに、本当に解雇以降の期間の賃金を支払わないといけないのでしょうか。
回答:
ご質問頂いたケースの場合、解雇以降の期間の賃金を支払わなければならないと考えられます。
会社と従業員は労働契約を結んでいる関係にあり、労働契約では、労働者は労務を提供(就労)し、会社は就労に対して対価を払うことが中心的な内容となります。 したがって、本来、賃金は、従業員が就労することによって初めて請求することができるものです。
しかし、従業員が解雇されたものの解雇が無効である場合には、当該従業員は、就労しようにも会社の無効な解雇という対応が原因で就労できなくなったものと考えられます。つまり、働く意思も能力も問題なく、会社がその就労を拒んだのだということになります。その結果、当該従業員は、実際には就労していなくとも賃金を請求することができるということになるのです。
ただし、当該従業員に働く意思や能力がないのであれば、そのような場合にまで、賃金を請求することはできません。また、当該従業員が解雇以降に他の会社で働いて収入を得ているような場合には、他の会社からの収入分の一部を控除することも考えられます。
ご質問頂いたケースでは、裁判所が解雇を無効と考えているようですので、解雇以降の期間の賃金を支払わなければならないと考えられます。
しかしながら、当該従業員に働く意思や能力がないことを主張したり、当該従業員が解雇後に他の会社で働いて収入を得ている等の事情を主張することにより、支払わなければならない賃金を相当程度減額できる可能性があります。
1989年生 / 札幌弁護士会所属(69期)
2016年12月 アンビシャス総合法律事務所 入所
重点取扱分野:M&A / 事業再編 / 労働問題
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