当社の従業員が他の会社でも就労していることが発覚しました。この従業員を懲戒解雇することが可能でしょうか。
更新日:2020.05.15
ご質問:
当社の従業員が他の会社でも就労していることが発覚しました。その従業員は、日中の時間帯に当社の業務を行い、その後、夜間の時間帯に他の会社の業務を行っているため、当社の業務中に明らかに集中力を欠いており、仕事に支障が出ています。当社の就業規則では、懲戒解雇事由として「会社の承認を受けずに在籍のまま他に雇入れられたとき」と定めているのですが、この従業員を懲戒解雇することが可能でしょうか。
回答:
多くの会社では、就業規則の中に従業員の兼業を禁止する規定を設けており、従前の裁判例においても、兼業を禁止する規定の合理性を認めて、懲戒解雇の有効性を認めたものが多く存在します(日通名古屋製鉄作業事件・名古屋地方裁判所平成3年7月22日労判608号59頁、東京メディカルサービス事件・東京地方裁判所平3年4月8日労判590号45頁等)。
他方、裁判例の中には、就業規則に兼業を禁止する規定が設けられているものの、所定労働時間外に行われる兼業については、使用者の労働契約上の権限の及ばないため、職場秩序に違反せず、労務の提供に支障が生じていないのであれば、兼業を禁止した就業規則の条項には実質的には違反しないと判断したものもあります(上智学院事件・東京地方裁判所平成20年12月5日労判981号179頁)。
このような裁判例の考え方を前提にすれば、従業員が兼業をしていることを理由として当該従業員を懲戒解雇することができるかは、兼業によって当該従業員の労務の提供に支障が生じてたり、企業秩序に違反することとなっているかという点を慎重に検討する必要があります。
ご質問のケースでは、会社が就業規則で兼業を禁止しているにもかかわらず、従業員が兼業を行っており、労務の提供にも支障が生じているとのことですので、就業規則に基づいて当該従業員を解雇できる可能性があります。ただし、仕事に支障が生じている原因が兼業にあるという点を立証することに困難が生じる可能性がありますし、当該従業員を懲戒解雇するためには、当該従業員に弁明の機会を与える等の手続が必要とされる場合がありますので、実際に当該従業員を懲戒解雇するに当たっては、慎重な検討が必要になります。
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