従業員から、部長が必要以上の強い叱責(パワーハラスメント)を繰り返しており、退職したいという申し出がありました。代わりに部長を解雇したいのですが、問題はありますか。
更新日:2020.04.24
ご質問:
従業員から、部長が必要以上の強い叱責(パワーハラスメント)を繰り返しており、精神的に耐えられないので退職したいという申し出がありました。このまま従業員が退職してしまうと困るので、代わりに部長を解雇したいのですが、問題はありますか。
回答:
本件のような必要以上の強い叱責の事案では、パワーハラスメントを理由に直ちに解雇することは難しいと考えます。
一般論として、解雇をするにあたっては、服務規律違反行為の内容(行為自体の悪質性や行為から生じた結果の重大性)と制裁(解雇)の均衡がとれていなければならず(比例原則)、均衡を欠く場合には労働基準法第16条に違反して無効となります。
本件のような必要以上の強い叱責の繰り返しの事案では、直ちに解雇することは労働基準法第16条に違反して無効と判断される可能性が高いです(※1、※2)。この場合、解雇された従業員が会社に対して地位確認請求訴訟や慰謝料請求訴訟を提起し、裁判上の紛争に発展する可能性があります。裁判になった場合、多額のバックペイや慰謝料を支払わなければならない可能性もあります。
したがって、弁明の機会を設けた上で、まずは戒告や譴責といった懲戒処分を行い、改善を促す必要があります。もし、戒告や譴責といった懲戒処分を行っても改善が見られない場合には、減給、出勤停止、降格といったより重たい懲戒処分を段階的に行い、改めて改善を促す必要があります。それでもなお改善が見られない場合には、最後の手段として普通解雇や懲戒解雇を行うことを検討して下さい。
なお、人事院が定める「懲戒処分の指針について」(※3)では、パワーハラスメントに関して、強度の心的ストレスの重積による精神疾患に罹患させた場合には免職、停職又は減給とするとされています(※3)。
※1 前橋地裁平成29年10月4日判決労判1175号71頁
※2 大阪地裁平成10年5月13日判決労判740号25頁
※3 人事院 平成12年3月31日職職-68 懲戒処分の指針について
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