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配転

配転命令は、本人が同意しない以上、無効になるのでしょうか。

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更新日:2020.05.22

ご質問

当社の就業規則には「会社は業務上の都合により従業員に配転を命ずることができる」と規定しています。当社には、東京本社で20年間勤務する従業員がおりますが、当該従業員は、リーダーシップがあり、仕事も良く出来るので、最近売上が落ちている札幌支社へ転勤させ、同支社の業績を立て直して貰おうと思い、転勤を命じたところ、当該従業員は、「首都圏以外の転勤は嫌だ」と言って、拒否しています。なお、当該従業員とは、職務内容や勤務地指定に関する約束は何らしていません。当社の配転命令は、本人が同意しない以上、無効になるのでしょうか。

回答:

 配転(配置転換)とは、一般に企業内で職務内容の変更や勤務場所が変更される人事異動をいいます。多くの企業では、就業規則や労働協約に本事例にみられるような包括的な配転命令条項を定めているかと思います。実務上、配転命令に関しては、このような条項の存在を前提にしながら、職務内容や勤務場所についての合意(特約)がなされていないか、配転命令の行使は権利濫用にならないかといった点が争いになります。

 配転命令の有効性について、最高裁判所昭和61年7月14日判決(東亜ペイント事件・労判477号6頁)は次のような枠組みを示しています。

① 労働協約や就業規則に「会社は業務上の都合により従業員に配転を命ずることができる」旨の定めがあり、労働契約で勤務場所を限定する合意がなされていない場合には、使用者は労働者の個別同意なしにも配転を命ずる権利を有する。

② しかし、当該配転命令につき業務上の必要性が存しない場合、他の不当な動機・目的をもってなされた場合、あるいは労働者に対して通常甘受すべき程度を著しく越える不利益を負わせるものである場合には、配転命令は権利の濫用となる。

 この判例法理の①は、その裏返しとして、労働契約で勤務場所や職務内容が特定されている場合には、使用者に配転命令権がなく、労働者の個別同意なしに職務内容や勤務場所の変更はできないことを意味しています。

 また、判例法理②は、業務上の必要性と労働者の受ける不利益の重大性との比較考量によって判断されることを意味しています。すなわち、労働者の不利益とは、「家族と別居になる」「高齢の親の介護ができない」「病身の両親を抱えて家業である農業をやらないといけない」など様々な事情が考えられますが、配転命令の有効性は、具体的事案に即し、業務上の必要性とこれらの事情を比較考慮した上で、権利の濫用となるか否かが判断されることになります。

 ご質問のケースでは、判例理論①の点については、従業員とは、職務内容や勤務地指定に関する約束はありません。判例理論②の点については、従業員が配転を拒否する理由は、首都圏から出たくないということですが、労働契約で勤務場所を特定していないのであれば(判例理論①の点)、配転により引っ越しをすることなどは労働契約の締結において想定されていたことであり、多くの場合、従業員の不利益はそれほど大きくないと評価されるでしょう。そして、当該従業員を転勤先で勤務させる業務上の必要性は高いと言えます。従業員が配転命令を拒否しても、無効とはならないと考えられます。

 実務上、配転命令の効力が問題となるケースは、より複雑な事実関係を前提とした慎重な判断が求められます。ご質問のケースでも、当該従業員が「首都圏以外の転勤は嫌だ」と言っている理由が、単に首都圏の便利な生活から離れたくないということ、高齢の実親の介護を仕事の時間外に常時行っているということ、父子家庭であり子供が私立小学校に通っており転校させることは子供の将来に影響が生じるということ等の個別具体的事情により不利益の評価は変わります。業務上の必要性についても個別具体的に判断することが必要です。したがって、使用者としては、対象従業員の意向もきちんと聴取し、話し合いを重ね、出来る限り納得してもらう形で、配転命令を行うべきです。

配転に関する労務等、いつでもお気軽にご相談ください。

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