新型コロナウイルス感染症の影響で、当社と派遣先との労働者派遣契約が中途解約された当該従業員に対してどのような対応をすべきでしょうか。
更新日:2020.04.28
ご質問:
当社は従業員(期間の定めなく雇用されている社員)を他の会社に派遣していますが、新型コロナウイルス感染症の影響で派遣先の経営状況が悪化したため、当社と派遣先との労働者派遣契約が中途解約されることになりました。これに伴い、会社として当該従業員に対してどのような対応をすべきでしょうか。
回答:
1 派遣労働者の新たな就業機会の確保
派遣元事業主は、派遣労働者の責めに帰すべき事由以外の事由によって労働者派遣契約が中途解約された場合には、当該派遣労働者の新たな就業機会を確保するため、派遣先とも協力しながら他の派遣先を確保することに努めなければなりません(「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」「第2」「2」「(3)」参照)。
2 新たな就業機会を確保できない場合の対応
派遣元事業主が派遣労働者の新たな派遣先を確保できない場合であっても、派遣元事業主と派遣労働者との間の労働契約は存続します。そのため、派遣元事業主は、派遣労働者の雇用を維持しながら、必要に応じて休業してもらい、派遣労働者に対して休業手当を支払うことで対応することになります(労働基準法第26条)。(※1)
しかし、派遣元事業主の業績の大幅な悪化などにより、派遣労働者を解雇しなければならないこともあるかもしれません。そのような場合には、期間の定めなく雇用されている派遣労働者を解雇することが権利の濫用として違法・無効にならないかどうかを慎重に検討すべきです(労働契約法第16条参照)。(※2)
その上で、やむを得ず派遣労働者を解雇する場合には、少なくとも解雇の30日前までに解雇予告を行うか、解雇予告を行わない場合には解雇予告手当を支払うことが必要になります(労働基準法第20条)。
※1 新型コロナウイルス感染症の影響に伴う経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた派遣元事業主が、派遣労働者の雇用の維持のために休業等を実施し、休業手当を支払う場合、雇用調整助成金が利用できる場合があります。
※2 派遣先への派遣が終了し、他に派遣する会社が見つからないことを理由に派遣労働者を解雇した事案において、裁判所は、いわゆる整理解雇の法理を適用し、解雇回避努力を尽くしたか、適切な手続をとったか等の事情を考慮して、解雇の適法性を判断しました(横浜地方裁判所平成24年3月29日判決労判1056号81頁参照)。
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