従業員が新型コロナウイルス感染症に罹患するのが心配であると言い、当社の業務命令に違反して出勤を拒絶し続けています。このような従業員に対して懲戒処分を行うことに問題はありますか。
更新日:2020.05.13
ご質問:
従業員が新型コロナウイルス感染症に罹患するのが心配であると言い、当社の業務命令に違反して出勤を拒絶し続けています。このような従業員に対して懲戒処分を行うことに問題はありますか。
回答:
新型コロナウイルス感染症への対策等の諸般の事情にもよりますが、一般論としては、懲戒処分を行うことは慎重に判断しなければなりません。
懲戒処分を行うにあたっては、懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、①客観的に合理的な理由があること、②社会通念上相当であること、の2つの要件を満たさなければなりません(労働契約法第15条)。
使用者には、労働者(従業員)の生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする義務があります(労働契約法第5条)。また、今般の新型コロナウイルス感染症は、現時点では治療薬がないこと(※1)や感染経路が明らかにならない、いわゆる「弧発例」が増えていること(※2)、重篤化する可能性もあること(※3)等に鑑みると、従業員が新型コロナウイルス感染症に罹患することを心配すること自体には合理的な理由があると考えられます。
したがって、懲戒処分を行う前に、新型コロナウイルス感染症への対策を講じ安全配慮義務を果たしているか(在宅勤務の可否、時差通勤を導入の可否、従業員同士の距離の確保の有無、新型コロナウイルスに罹患している従業員やそのおそれがある従業員を出勤の有無等)を確認して客観的に合理的な理由があるかを検討した上で、従業員が出勤する必要性や従業員が出勤を拒絶することによって使用者に生じる不利益の程度、懲戒処分の内容等の諸般の事情を考慮して判断することになります。
なお、従業員が出勤を拒絶した日については、ノーワークノーペイの原則に基づき賃金を支払う必要はありません(民法624条)(※4)。
※1 新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け) 「新型コロナウイルスについて」問10
※2 新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け) 「緊急事態宣言と政府の方針」問1
※3 新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け) 「症状がある場合の相談や新型コロナウイルス感染症に対する医療について」問8
※4 新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け) 「4 労働者を休ませる場合の措置(休業手当、特別休暇など)」問4
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