退職した従業員から、支給日在籍要件は労働者にとって不利益な規定であり無効だとして、在籍期間に応じた賞与を支払えとの請求を受けています。賞与を支払わなければならないのでしょうか。
更新日:2020.05.27
ご質問:
当社は、就業規則で年二回分(7月と12月)の賞与規定を設けていますが、その支給要件として「賞与は支給日に在籍している従業員に支給する」との支給日在籍要件を定めています。
当社には、今年の6月末に退職した従業員がいましたが、当該従業員から、支給日在籍要件は労働者にとって不利益な規定であり無効だとして、在籍期間に応じた賞与を支払えとの請求を受けています。当社は、賞与を支払わなければならないのでしょうか。
回答:
賞与は、ボーナスや一時金とも呼ばれ、月例給とは別に支払われる賃金として、年間賃金の相当部分を占めているかと思います。通常、夏季と年末の2回の支給されることが多く、支給対象期間を設け、支給対象期間の経過後に支給する形を取ることが多くみられる定め方です。
賞与は、①賃金の後払的性格、②企業の成果・利益配分、③功労報償、④現在、将来の勤務のインセンティブの付与、⑤生計費補填といった多様な性格を有しています。
そのため、就業規則等で、労働者が賞与の支給日に在籍することを支給要件と定め、支給日以前に退職した労働者に賞与を支給しないという取り扱いが問題となります。例えば、上記①の点を重視すれば、支給日に在職していなくとも、支給対象期間に在職していれば、その期間の労働に対する賃金である以上は、労働者に受給する権利を認めるべきという考えになるためです。
この点、判例は、賞与が労働の対価であることに加え、将来の勤務への期待・奨励(上記④の点)という意味も込めて支払われていることから、合理的な支給要件として、適法と解しています(最高裁判所昭和57年10月7日・労判399号11号・大和銀行事件)。
したがって、ご質問のケースにおいても、賞与の支給日に在籍していない元従業員に対して賞与を支払う必要はありません。
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