店長を務める従業員から、残業代の支払いを求めて訴訟を起こされたのですが、経営者に近いような立場にいる当該従業員にも、残業代を支払わなければならないのでしょうか。
更新日:2022.02.07
ご質問:
当社は、複数の飲食店の運営を主たる業務としています。このたび、従業員から、残業代の支払いを求めて訴訟を起こされたのですが、当該従業員は、当社が運営している飲食店の店長であり、店舗の売上管理や従業員の採用活動にも関与しており、単なる従業員というよりは経営者に近いような立場にいます。そのような場合にも、当社は、当該従業員に残業代を支払わなければならないのでしょうか。
回答:
残業代を支払わなければならない可能性があります。
「監督若しくは管理の地位にある者」(以下「管理監督者」といいます)については、労働時間に関する労働基準法の規定が適用されないため(労働基準法41条2号)、法定労働時間を超えて労働していたとしても、残業代の支払義務は発生しません。そのため、当該従業員が管理監督者に該当すれば、当該従業員に対する残業代の支払義務は発生しません。
この点について、行政解釈は、従前の裁判例等を踏まえて、飲食業等の店舗における管理監督者の該当性について、「経営者と一体的な立場にある者であって、労働時間、休憩及び休日に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にあるかを、職務内容、責任と権限、勤務態様及び賃金等の待遇を踏まえ、総合的に判断する」(平成20年9月9日基発0909001号)という指針を示しています。
ご相談いただいた事案では、店長を務める従業員は、売上の管理や採用活動にも関与していたということですので、それなりに重要な職務を担当しているものと思われます。しかしながら、管理監督者の該当性は、職務内容のみによって決定されるものではありませんので、当該従業員の勤務態様や賃金等の待遇等の事情によっては、御社が残業代の支払義務を負うことになる可能性があります。
実際、大阪地判昭和61年7月30日(労判481号51頁)は、飲食店の店長を務めていた従業員が残業代を請求した事案について、当該従業員が従業員の採用の一部や売上金等の管理をしていたという事実を認定しつつ、当該従業員の労働時間もタイムレコーダーによって厳格に管理されていたこと等の事情を考慮し、残業代の支払義務を認定しています。
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1989年生 / 札幌弁護士会所属(69期)
2016年12月 アンビシャス総合法律事務所 入所
重点取扱分野:M&A / 事業再編 / 労働問題
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