有給休暇を買い取って欲しいという従業員の要望に応じなければならないのでしょうか。
更新日:2020.05.22
ご質問:
当社では、業務が集中している従業員から、有給休暇を買い取って欲しいという要望があります。就業規則に規定があるわけではありませんが、このような従業員の要求には応じなければならないのでしょうか。
また、会社の方から従業員に対して有給休暇の買取りを要求する場合はどうでしょうか。
回答:
未消化の年次有給休暇を買い取る(金銭的に補償する)ということを認めている会社もあります。しかし、このような未消化の年次有給休暇の買取制度は法律上要求されているものではなく、会社が任意の制度等として認めているにすぎないものです。会社として、雇用契約上の特別の定めや合意が存在しない限り、そのような要求に応じる義務はありません。
したがって、労働者から有給休暇の買取りについての要望があった場合、これに応じなかったとしても、違法にはなりません。
他方で、業務遂行を優先させるためなど、使用者側から従業員に対して有給休暇の買取りを行いたい場合があります。
しかし、有給休暇とは、労働者が心身の疲れを回復させ、継続して意欲的に働けるように休んでもらうための制度です。したがって、労働者を休ませずに、代わりにお金を支給することは、有給休暇という制度の本来の趣旨に反することになりますので、使用者の側から労働者に対して有給休暇の買取りを求めたり、有給休暇を与えないことは労働基準法(以下「法」といいます)39条に違反します。
行政通達にも「年次有給休暇の買上げの予約をし、これに基づいて(労働基準)法第39条の規定により請求し得る年次有給休暇の日数を減じないし請求された日数を与えないことは、法第39条の違反である」と定められています。
なお、このような有給休暇の趣旨からすると、労働基準法で定められている有給休暇の日数を超えて有給休暇を付与している場合に、その超過分の日数の有給休暇を買い取ることは違法にはなりません。
年次有給休暇に関する労務等、いつでもお気軽にご相談ください。
当事務所の業務の中心は企業法務です。企業法務の中でも労務関連分野は、法律の制定や改正、経済の動向や社会情勢の変化の影響を受けやすいため、最新の事例を踏まえた柔軟な対応を求められます。
当事務所の弁護士や社会保険労務士、司法書士は、労務分野の諸問題に積極的に取り組んでいます。
何らかのトラブルや問題を抱えておられる方は、いつでもお気軽にお問合せください。
よく読まれている記事
- 全員に年度初めに一律20日の有給休暇を与えてもよいでしょうか。(2019.05.04)
- 勤務態度が良くない従業員の年次有給休暇の取得を取り下げさせた場合、会社が法的責任...(2020.10.30)
- 横領行為が発覚して即時解雇した従業員から、未消化年休の買取りの要求がありました。...(2020.05.22)
- 有給休暇の希望を拒否できますか。(2019.05.04)
- 有給休暇を取得した従業員に対して、賞与を半減することは許されますか。(2020.01.20)