横領行為が発覚して即時解雇した従業員から、未消化年休の買取りの要求がありました。応じなければならないのでしょうか。
更新日:2020.05.22
ご質問:
当社は、飲食店を経営していますが、先日従業員による横領行為が発覚したため、当社は、解雇予告除外認定を取得した上で、当該従業員を即時解雇しました。しかし、その数日後、当該従業員から、当社に対し、未消化年休の買取りの要求がありました。当社は、年休の買取りに応じなければならないのでしょうか。
回答:
年次有給休暇の権利と解雇の関係について、「年次有給休暇の権利は予告期間中に行使しなければ消滅する。」との行政解釈があります(昭和23年4月26日基発)。これは、解雇・退職の理由の如何を問わず、年次休暇の権利は、雇用関係の存続期間中に労働者が時季指定しなければ、具体的な効果を生じないことを示しています。
したがって、ご質問のケースでは、当該従業員に対する即時解雇が有効になされており、雇用関係は終了しています。そうである以上、当該従業員の年次有給休暇の権利も消滅することになります。
上記のように年次有給休暇は雇用関係継続中に権利行使しなければならないことから、雇用関係の終了時に未消化の年次有給休暇が残ることもあります。そのような場合に、未消化の年次有給休暇を買い取る(金銭的に補償する)ということを認めている会社もあります。
しかし、このような未消化の年次有給休暇の買取制度は法律上要求されているものではなく、会社が任意の制度等として認めているにすぎないものです。
したがって、ご相談の件でも、会社として、雇用契約上の特別の定めや合意が存在しない限り、そのような要求に応じる義務はありません。
年次有給休暇に関する労務等、いつでもお気軽にご相談ください。
当事務所の業務の中心は企業法務です。企業法務の中でも労務関連分野は、法律の制定や改正、経済の動向や社会情勢の変化の影響を受けやすいため、最新の事例を踏まえた柔軟な対応を求められます。
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