在宅勤務をする従業員には、秘密保持のために誓約書を提出してもらいたいと思っていますが、どのような内容を盛り込めばよいでしょうか。
更新日:2020.05.14
ご質問:
新型コロナウイルス感染症の感染予防のため、在宅勤務を導入することにしました。従業員には自宅のパソコンから会社のサーバーにアクセスしてもらうことになります。在宅勤務をする従業員には、秘密保持のために誓約書を提出してもらいたいと思っていますが、どのような内容を盛り込めばよいでしょうか。
回答:
企業の秘密情報としては、企業自身の秘密情報のほか、取引先等に関する秘密情報、企業活動の過程で取得した個人情報等の各種の情報があります。個人情報が漏えいした場合には、民事上の損害賠償責任(民法第709条)を負うにとどまらず(※1、※2、※3、※4)、刑事上の責任を負う可能性もあります(個人情報の保護に関する法律第83条、同第84条等)。また、取引先等に関する情報が漏えいした場合には、やはり民事上の損害賠償責任(民法第415条第1項)を負うことになります。
したがって、従業員には秘密情報が流出しないように慎重にサーバーへのアクセスをしてもらうべきであり、そのために下記の各事項について、従業員に対して説明し理解してもらった上で、これらの事項を書面化した秘密保持の誓約書を作成してもらうことが望ましいです。また、これらに違反した場合には、損害賠償責任を負うことになることを併せて周知することが望ましいです。
① 在宅勤務に先立って、当社の承認を受けたセキュリティソフトをインストールし、秘密保持の体制を整えること
② 当社が定める秘密情報取り扱いマニュアルを遵守すること
③ 経理ソフトのデータ、給与計算ソフトのデータ、クラウドサービスのID並びにパスワード及びその他の当社が所有又は管理する一切の情報(文書、電子ファイル、その他の記録媒体の種類を問わない。また、それらの複製物も含まれるものとする。以下「秘密資料」という)を第三者に開示又は漏えいしないこと
④ 当社の秘密資料を自己のため又は第三者のために使用しないこと
⑤ 当社の秘密資料を当社の許可なく社外に持ち出さないこと
⑥ 当社の秘密資料を当社の許可なく複製しないこと(電子ファイルをパソコン、USBメモリー、その他の記録媒体に複製することも含まれるものとする)
⑦ 在宅勤務の必要がなくなった場合には、当社の許可を得て社外に持ち出した秘密資料を全て当社の指示に従い返還すること
⑧ 在宅勤務の必要がなくなった場合には、当社の許可を得て複製した秘密資料を全て当社の指示に従い返還し又は破棄すること
※1 大阪高裁平成13年12月25日判決ジュリスト1224号8頁
※2 大阪高裁平成19年6月21日判決ジュリスト1518号77頁
※3 東京高裁平成19年8月28日判決判タ1264号299頁
※4 東京高裁令和2年3月25日判決判例集未搭載(上告受理申立てにつき未確定)
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