新型コロナウイルス感染症の影響で会社の業績が悪化したため、新入社員の内定を取り消したいのですが、可能でしょうか。
更新日:2020.04.24
ご質問:
新型コロナウイルス感染症の影響で会社の業績が悪化したため、新入社員の内定を取り消したいのですが、可能でしょうか。
回答:
使用者が労働者に対して採用内定の通知を行うことにより、使用者と労働者の間には、解約権留保付きの労働契約が成立すると考えられています(大日本印刷事件・最高裁判所第二小法廷昭和54年7月20日民集33巻5号582貢、電電公社近畿電通局事件・最高裁判所第二小法廷昭和55年5月30日民集34巻3号464頁)。「解約留保権付き」とは、使用者に内定者との労働契約を解約できる権利が留保されているということです。ただし、使用者が解約権を行使することができるのは、採用内定通知書や誓約書に記載された内定の取り消し事由がある場合等、客観的に合理的と認められ社会通念上も相当である場合に限られます。
そのため、新入社員の内定を取り消すことが可能であるかは、内定を取り消すことが客観的に合理的と認められ社会通念上も相当であるかによって判断されることとなります。
本件の場合、新型コロナウイルス感染症により会社の業績が悪化したとしても、会社の業績悪化の程度がわずかであり、会社が内定取り消し以外の方法を検討していない場合には、内定を取り消すことは困難であると考えられます。他方、会社の業績が大幅に悪化して、会社の存続が危ぶまれる状態に陥り、会社が内定取り消し以外の様々な方法を模索したものの、内定を取り消さざるを得ないような場合には、適法に内定を取り消すことができる可能性もあると考えられます。
すなわち、内定の取り消しの可否は、新型コロナウイルス感染症の影響によって会社の業績がどの程度悪化したのか、会社として内定の取り消しを回避するためにどのような措置を行ったのか等の個別具体的な事情によって異なるため、内定を取り消すにあたっては慎重な判断が必要となります。
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