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労基法等による賃金の保護

運送業務用のトラックで交通事故を起こして退職した従業員から、弁護士を通じて残業代を請求されました。当社からトラックの修理費用や修理の間に失った利益の請求は可能でしょうか。

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更新日:2021.08.04

ご質問

当社は、貨物自動車運送事業を営んでおり、物流事業部に所属し運送業務を行う従業員には1台ずつトラックを使用させています。

ある日、物流事業部の従業員が居眠り運転をして交通事故を起こしました。幸い、単独事故だったので被害者はいなかったのですが、トラックが破損したので修理をしなければならなくなり、修理の間にそのトラックを使用することができなくなってしまいました。

交通事故を起こした従業員は、今回のことが精神的にこたえたのか、その後まもなくして当社を退職しました。ところが、しばらく経ってから、弁護士を通じて当社宛に、残業代を請求するという書面が届きました。 法律で残業代を支払わなければならないのであれば、やむを得ないとは考えていますが、トラックの修理費用や修理の間にトラックを使用することができなくなったことで失った利益の請求をしたいと考えています。



回答:

 会社の従業員に対する損害賠償請求は、制限されることが多く、一部しか認められないことや、全く認められないことも珍しくないので、弁護士に相談して対応を決めるようにしてください。

 従業員が故意や過失によって労働契約上の義務に違反し、これによって会社に損害を生じさせた場合、原則として、会社は従業員に対して損害賠償請求をすることができます(民法415条1項、同709条)。

 しかし、最高裁判例では、従業員と会社の間の損害の公平な分担という観点から、信義則(民法1条2項)上相当と認められる限度に限って、損害賠償請求をすることができるとされています(最高裁昭和51年7月8日判決)。これは、「自ら危険を作り出しコントロールする者(注・会社)はその危険の結果である損害について責任を負うべきである」という危険責任の考え方や、「利益をあげる過程で他人に損害を与えた者はその利益の中から賠償するのが公平である」という報償責任の考え方を根拠とするものと考えられています。

 具体的にどの程度の限度で損害賠償請求が認められるのかは、下記の事情を踏まえ、個々の事案に応じて判断されているため、一般化することは困難です。例えば、今回のような交通事故の事案では、損害額の50%に相当する金額の損害賠償請求を認めているものもありますが(東京地裁平成17年11月25日判決)、他方で全く損害賠償請求を認めなかったものもあります(東京地裁平成29年2月22日判決)。

①事業の性格

②規模

③施設の状況

④被用者の業務の内容

⑤労働条件

⑥勤務態度

⑦加害行為の態様

⑧加害行為の予防若しくは損失の分散についての使用者の配慮

⑨その他諸般の事情

 

 したがって、従業員に対する損害賠償請求を行うことを検討している場合は、弁護士に相談して対応を決めるようにしてください。

労基法等による賃金の保護に関する労務等、いつでもお気軽にご相談ください。

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