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労働者からの一方的な解約

会社の費用で留学させた従業員が帰国後まもなく退職した場合、誓約書に基づいて、費用を返してもらうことはできるのでしょうか。

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更新日:2021.07.29

ご質問

当社では会社の費用で従業員に留学をさせることがありますが、留学に先立ち「帰国後、一定期間を経ず特別な理由なく退職することとなった場合、会社が留学中に支払った一切の費用を返還すること」などと記載した誓約書を提出してもらっています。もし、留学から帰国後まもなく、その従業員が退職することになった場合、この誓約書に基づいて、留学のために当社が負担した費用を返してもらうことはできるのでしょうか。



回答:

 労働基準法では「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」(労基法16条)と規定されています。


 ご質問のように、誓約書で定めた約束に違反する退職であるとして留学にかかった費用の返還を要求することは、違約金又は損害賠償額の予定にあたり、労基法16条に違反するものとして無効となる可能性があります。

 そして、このような場合に、労基法16条に違反するか否かについて、裁判例では「単に契約条項の定め方だけではなく、労働基準法16条の趣旨を踏まえて当該海外留学の実態等を考慮し、当該海外留学が業務性を有しその費用を会社が負担すべきものか、当該合意が労働者の自由意思を不当に拘束し労働関係の継続を強要するものかを判断すべきである」(東京地判平14.4.16労判827号40頁)と判示されています。

 この裁判例では、留学に至った経緯について、従業員個人の意向による部分が大きく、最終的に従業員が自身の健康状態、誓約書の内容、将来の見通しを勘案して留学を決定したこと、従業員が、留学で獲得した経験や資格によりその後の転職が容易になるという形で現実に利益を得たことなどの事情を考慮して、労基法16条に違反しないと判断しています。

 他の裁判例においても、当該留学の業務性や帰国後に条件づけられている勤続の年数、返還の額等の具体的な事情をもとに判断される傾向にありますが、個別の事案に応じて判断は分かれますので、自社でこのような制度を採用する場合には、専門家のアドバイスに従って手続きを進めることをお勧めします。

労働者からの一方的な解約に関する労務等、いつでもお気軽にご相談ください。

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