行方不明になって半年以上無断欠勤が続いている従業員を解雇したいのですが、どのような手続きで解雇すればよいでしょうか。なお、当社の就業規則では、無断欠勤を懲戒解雇事由として定めています。
更新日:2021.02.24
ご質問:
当社には、行方不明になって半年以上無断欠勤が続いている従業員がいます。この従業員を解雇したいのですが、どのような手続きで解雇すればよいでしょうか。なお、当社の就業規則では、無断欠勤を懲戒解雇事由として定めています。
回答:
1 解雇通知の方法
解雇は、使用者から労働者に対する一方的な意思表示によって労働契約を終了させることであり、解雇通知は意思表示の一種です。通常の場合であれば、労働者に対して口頭又は文書によって解雇通知をすれば意思表示を行ったことになりますが、ご質問のケースのように労働者が行方不明となって連絡が取れない場合には、労働者本人に意思表示を伝えることができないため、以下のような特別な方法による必要があります。
民法では「公示による意思表示」(民法第98条)という方法が定められています。具体的な手続きについては、民法及び民事訴訟法の公示送達の規定に定められていますが、概略としては、まず裁判所に対して公示による意思表示の申立てを行い、その決定を得た上で裁判所によって掲示及び官報等への掲載が行われ、官報等に掲載された後2週間を経過することによって解雇通知の効力が発生することになります。
2 就業規則の工夫
このように「公示による意思表示」を行うためには裁判所への申立てが必要となり、時間と費用がかかります。
そのため、就業規則に「労働者が行方不明となり無断欠勤が半年以上に及んだときには退職扱いとする」等の自動退職事由を定めておく方法も考えられます。自動退職事由に該当すれば、解雇通知を行う必要はなく、上記のような裁判所の手続きを経る必要もないため、煩雑な手続きを避けることができます。もっとも、就業規則の内容は合理的であることが求められるため、自動退職事由として、あまりに短期間の無断欠勤期間を定めることのないようにして下さい。
3 ご質問のケースの対応
ご質問のケースでは、今回の解雇については「公示による意思表示」によって解雇通知すべきでしょう。なお、解雇通知とあわせて解雇予告手当を支払う旨も通知する必要があります。
その上で、今後同様の事態が生じた場合に煩雑な手続きを省くことができるように、就業規則に上記のような自動退職事由を定めることも検討すべきでしょう。
退職・解雇・退職金に関する労務等、いつでもお気軽にご相談ください。

1991年生 / 札幌弁護士会所属(72期)
2020年1月 アンビシャス総合法律事務所 入所
重点取扱分野:民事訴訟
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