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当社の従業員が休日に電車内で痴漢行為を行い、逮捕されました。従業員の弁護士が被害者と話し合い示談が成立し、起訴はされずに解放されたようです。この従業員を懲戒解雇しようと思っていますが、問題ないでしょうか。

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更新日:2021.07.29

ご質問

当社の従業員が休日に電車内で痴漢行為を行い、逮捕されました。従業員の弁護士が被害者と話し合い示談が成立し、起訴はされずに解放されたようです。このような犯罪行為を在職中にした者は許せないので、この従業員を懲戒解雇しようと思っていますが、問題ないでしょうか。



回答:

1.就業規則の規定

 従業員に対して懲戒処分を行うためには、就業規則に懲戒処分についての規定が定められていることが必要です。今回は懲戒解雇を検討しているということですので、就業規則に懲戒の規定があり、処分の内容として懲戒解雇が規定されていること(懲戒規定を定めていれば、通常は懲戒解雇も定めています)、今回の行為が懲戒解雇の処分の対象となる理由として就業規則に規定されていること(例えば「犯罪行為その他これに準ずる行為を行った場合」には懲戒解雇の処分対象となることを明記)が必要です。

 小規模のため就業規則を定めていなかったり、就業規則に懲戒規定がない場合には、懲戒処分をすることはできません。



2.私生活上の行為と懲戒処分

 今回の従業員の犯罪行為は、休日に行われたものですので、労働時間中ではない私生活を過ごしている時間に行われた私生活上の行為です。

 業務とは無関係の私生活上の行為については、会社は関与すべきものではないので、私生活上の行為を理由に懲戒処分を下すことはできないのが原則となります。

 もっとも、労働者は、会社と労働契約を締結することで、会社の信用を毀損しない義務を負います。そのため、私生活上の出来事であっても、会社の信用を毀損するような行為を行った場合には、労働契約上の義務に違反したものとして懲戒処分を行うことができる場合があります。

 

 例えば、電車内の痴漢行為が酷く、加害者の名前と共に勤務先の会社名も大々的に広く報道されてしまったような場合には、会社の信用を毀損したといえます。実際の裁判でも、会社が電車内で痴漢行為を行った労働者を懲戒解雇した件について、懲戒解雇を有効であると判断した裁判例が存在します(東京地裁平成14年11月15日判決(労判844.38)、東京高裁平成15年12月11日判決(労判867.5)小田急電鉄事件)。

 もっとも、懲戒解雇は懲戒処分の中で最も重く、今回の事件のようにスムーズに示談が成立し、起訴もされなかった場合に、懲戒解雇が処分として相当かというと疑問があります。

 上記の裁判例も、小田急電鉄の従業員が他の私鉄で痴漢行為を行い、しかも、過去にも痴漢行為で複数回懲戒処分を受けていたにもかかわらず再度痴漢を行ったという事案でした。痴漢を撲滅しようとする鉄道会社の従業員が痴漢を行ったということは、会社の信用を著しく毀損するものでしたし、初めてのことではなかったので懲戒解雇が認められたものです。

 今回の事件の具体的事情によりますが、懲戒解雇の処分としても、無効となる可能性はあります。


3.貴社のとるべき対応
 

 上記のとおり、痴漢で逮捕されれば、当然に懲戒解雇にできるというものではありません。

そのため、弁護士に相談の上、懲戒解雇が認められる事案か、逆に懲戒解雇は明らかに無理がある事案か、その中間で判断が難しい事案かを見定める必要があります。

 懲戒解雇は明らかに無理がある事案の場合、会社として職場の秩序維持、環境整備のために辞めてもらいたいと思うのであれば、本人と協議して自主退職などを一緒に考えることになります。

 懲戒解雇が認めらるか否かの判断が難しい場合には、最終的には会社としての経営判断になりますが、懲戒解雇処分とすることも一つの選択です。

 いずれの場合にせよ、逮捕により身柄拘束をされているときは弁護士や家族を通じて、解放された後は本人と直接、今後の就労意思の有無、会社の方針などを踏まえて話し合い、弁護士に相談をしつつ結論を出していくことが適切です。

退職・解雇・退職金に関する労務等、いつでもお気軽にご相談ください。

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