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労基法・労契法・労災法上の「労働者」性

会社と講師の双方が納得した上で、雇用契約ではなく業務委託契約を締結したのに、年次有給休暇の取得や残業代請求が認められることはあるのですか。

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更新日:2022.02.07

ご質問

当社は、専門学校を営む会社です。講座を担当する講師との契約は、社内業務も行う講師とは雇用契約を締結し、社内業務を行わない講師とは業務委託契約を締結しています。

この度、当社と業務委託契約を締結し、社内業務を行っていない講師から、実質的には雇用契約であるとして、年次有給休暇の取得を請求されました。これを断ったところ、今度は残業代の支払を請求されました。

会社と講師の双方が納得した上で、雇用契約ではなく業務委託契約を締結したのに、年次有給休暇の取得や残業代請求が認められることはあるのですか。



回答:

 形式的には業務委託契約であっても、実質的には労働者性が認められ雇用契約であると裁判所が判断することがあります。もっとも、法的に業務委託契約と評価されるか、雇用契約と評価されるかは、明確に線引きすることは難しいので、契約締結に先立って専門家と相談しながら契約内容を決めるようにしてください。

 労働基準法上の労働者性について、「労働基準法研究会報告(労働基準法上の『労働者』の判断基準について)」(昭和60年12月19日)で判断基準が示されており、「指揮監督下の労働」であるか否かという観点から判断するとされています。具体的には、①仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の事由の有無、②業務遂行上の指揮監督の有無、③場所や時間の拘束性の有無、といった要素を中心に、総合的に考慮して判断することになります。

 そして、判例や裁判例でも、報告が示す判断基準を念頭に労働者性を判断する傾向にあります(※1、※2)。

 ただし、個別具体的な事案での判断は、指摘した要素やその他の事情を総合的に考慮して判断するため、判断が容易でない場合が多いです。したがって、使用者としては、業務委託契約を締結する際に、報告が指摘した要素を踏まえ、①諾否の有無を可能な限り認める、②業務上の指揮監督を減らす、③場所や時間の拘束を緩和する、といった対応をして、「指揮監督下の労働」と判断され得る要素を極力除外する必要があります。

 なお、本件のような専門学校の講師の場合、講座に対する指揮監督命令の存在や時間と場所の裁量がないこと、講座以外の業務の負担の存在等の事情を指摘し、労働者性を認めると判断した裁判例が散見され(※2、※3)、一般的な傾向として労働者性が認められています。したがって、業務委託契約の締結に先立って、どのような契約内容とするか、専門家に相談しながら慎重に判断してください。

 

※1 最高裁平成8年11月28日判決集民180号857頁

※2 福岡高裁平成21年5月19日判決労判989号39頁

※3 大阪地裁令和元年5月30日判決



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