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身元保証人

顧客から受け取った売買代金を横領した従業員の身元保証人から被害額の全額の賠償を受けることはできるのでしょうか。

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更新日:2021.06.21

ご質問

当社は中古車販売を業とする会社です。先日、当社の営業担当者の従業員が顧客から受け取った自動車の売買代金を横領していることが発覚しました。当該従業員には身元保証人がいます。当該従業員自身は、ギャンブル依存症でサラ金などからも借金しているそうで、当社の被った被害額を回収することはできそうにないです。そこで、身元保証人に請求しようと思いますが、当社は、被害額の全額の賠償を受けることはできるのでしょうか。


回答:

1 身元保証人の責任の範囲

 

 まず、結論として、従業員に身元保証人がついているからといって、ご相談のように、従業員が損害を発生させた場合に被害額の全額の賠償を受けることができるとは限りません。

 身元保証人が自発的に任意で支払ってくれれば良いのですが、そうではない場合、身元保証人の責任は、従業員の監督に関する使用者の過失の有無、身元保証人が保証をするに至った理由、身元保証人が保証をするときに用いた注意の程度、従業員の担当業務などの変化、その他一切の事情を総合的に勘案して決定することになります(身元保証法第5条)。

 裁判例でも、①水道料金収納事務受託者の従業員が水道料金を横領して、身元保証人の責任が問われた事案において、横領行為を未然に防止することができず、また発見が遅れたのは使用者が指導監督を懈怠した事情を考慮し、身元保証人の責任を軽減した事例(仙台高裁平成4年4月17日判決・判例時報1443号68頁)や、②貴金属販売業者の従業員が宝石の入った鞄を持って営業中に盗難にあい、身元保証人の責任が問われた事案において、身元保証人になった経緯、身元保証人の収入状況や資産額などを考慮して、身元保証人の責任を軽減した事例もあります(東京地裁平成6年9月7日・判例時報1541号104頁)。

 このように実際の事例においても、裁判所は、身元保証人の責任を相当に限定していますので、設例のケースでも、身元保証人から、被害額の全額の賠償を受けることは難しいと考えられます。会社が身元保証人にできる限り多く請求を認めてもらうには、身元保証契約の際、身元保証人の意思を直接確認したり、従業員が問題行動を起こさないための管理体制を作るなど、会社としての落ち度をできる限り少なくすることが望ましいと考えられます。




2 改正民法による極度額の制限


 2020年4月から施行された改正民法により、身元保証の場合に上限の設定が必要となりました。この点については、別の記事をご覧ください。


新人の従業員を採用するにあたって、身元保証人がいると、どんなメリットがあるのでしょうか。



 ご相談の件で、身元保証に上限が設定されている場合には、その上限の制約も受けることにご留意ください。

身元保証人に関する労務等、いつでもお気軽にご相談ください。

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