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労働契約の成立と内定・内々定の法的性質

期間の定めのある契約(有期労働契約)で従業員を雇用することで、何か注意すべき点はありますか。

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更新日:2020.05.22

ご質問

当社は、今後の事業拡大を見据えて、従業員の積極的な増員を考えています。会社の業績や社会情勢の変化に合わせて、柔軟に従業員の数を調整できるよう、期間の定めのある契約(有期労働契約)で従業員を雇用することを考えているのですが、何か注意すべき点はありますか。

回答:

1 有期労働契約と雇止めの制限

 有期労働契約は契約期間の満了により労働契約が終了します。そのため、お考えのとおり、契約期間を1年などとして、契約期間の満了時に会社の業績や社会情勢などを踏まえて契約を更新したり、更新をせずに終了(雇止め)させることにより従業員の数を調整することができます。

2 無期労働契約への転換の可能性

 上記の雇止めの制限は労働者の雇用の安定のためですが、さらに、労働者の希望により雇用の安定を確保させるための制度が労働契約法第18条に定められています。労働契約法第18条では、有期労働契約で雇用されている従業員の地位の安定を図るため、一定の条件を満たす場合には、有期労働契約が期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されることを定めています(いわゆる無期転換ルール)。(※1)

 ご質問のケースで、例えば、従業員を契約期間1年で雇用し、その後も契約更新を続けて雇い続けるという方法を採った場合には、契約が5回更新され6回目以降の契約に至った時点で、従業員には無期転換申込権が発生しますので、従業員が無期労働契約への転換を希望したときは、現在の契約期間の満了日以降は期間の定めのないものとして雇用することになります。

3 雇止めが制限される可能性

 上記のような無期労働契約への転換を避けるために、通算契約期間が5年を超える前に従業員を雇止めする場合、会社として慎重な対応をしておかなければ、労働契約法第19条により雇止めが無効となる可能性がありますので注意が必要です。(※2)

4 会社として考えられる対応

 無期転換ルールは、会社の内部事情に精通した従業員を期間の定めなく安定的に確保でき、長期的な視点に立って社員教育等を実施することができる等、会社にとってもメリットのある仕組みです。ご質問のケースでも、有期労働契約で従業員を雇用した後にそれぞれの従業員の職務態度や能力等を把握し、意欲や能力のある従業員を積極的に無期転換することも検討すべきでしょう。

 また、従業員を無期転換する場合には、別途合意をしない限り、「契約期間」が「期間の定めがないもの」に変更されるだけである点にも注意が必要です。契約期間以外の労働条件は、原則として転換前の労働条件となります。したがって、無期転換された従業員に対して、どのような労働条件を適用するかを検討し、「契約期間」以外の労働条件も変更しようと考える場合には、就業規則にその旨を規定する必要があります。特に定年など、有期契約労働者には通常定められていない労働条件を新たに適用する必要がないかに注意し、適切に設定の上、就業規則に定めるようにしましょう。

※1

労働契約法第18条第1項は、同一の使用者の下で有期労働契約が更新されて通算契約期間が5年を超える場合に、労働者が無期労働契約への転換の申込みをすれば、使用者がその申込みを承諾したものとみなされ、現在の契約期間が満了する日の翌日を始期とする無期労働契約が成立することになる旨を定めています。

※2

労働契約法第19条は、従業員が契約更新を期待することに合理性がある場合等には、雇止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、雇止めが認められない旨を定めています。

 有期労働者の雇止めに際して、会社が留意すべき点については、下記の記事をご参照下さい。

業績の低迷を理由に、有期雇用で採用している契約社員の契約更新を行わないこと(雇止め)を検討しています。雇止めが認められない場合はありますか。

労働契約の成立と内定・内々定の法的性質に関する労務等、いつでもお気軽にご相談ください。

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