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使用者に対する民事訴訟

工場設備の整備不良が原因で怪我をした従業員の弁護士から、損害賠償請求を受けました。労災給付とは別に当社が損害を賠償しなければならないのでしょうか。

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更新日:2021.08.11

ご質問

当社の従業員が工場内で怪我をして手術を受け入院しました。既に退院して自宅で療養中ですが、後遺症が残る見込みです。当社は、すぐに労災の手続きをして、労災として認められて、給付も受けています。怪我の原因は、工場設備の整備不良でした。
先日、その従業員の弁護士から、損害賠償請求を受けました。本人は労災が認められて給付を受け、後遺症についても継続的に労災給付を受けられる見込みと聞いています。ちゃんと労災給付を受けられるようにしたのに、それとは別に当社が損害を賠償しなければならないのでしょうか。



回答:

 結論としては、本件では、貴社は損害賠償をする責任があります。

 従業員が業務中に怪我をした場合、業務が原因で病気になってしまった場合、通勤中に事故に遭ってしまった場合には、労働者災害補償保険法という法律に基づいて、保険給付を受けることができます。医療費、休業補償、後遺障害が残る場合にはその結果生じ得る逸失利益(後遺症によって満足に働けなくなることにより将来的に減少する収入)などを法令の内容に基づいて算出されて支払われます。

 そして、業務上の怪我等の原因が、使用者(会社)に責任がある場合には、その従業員は使用者に対して損害賠償を請求することができます。


 従業員は使用者の下で業務を行っていることから、使用者は従業員を危険から保護するよう配慮すべきという安全配慮義務を労働契約の当事者として負っていると判例で認められてきました。そして、現在では、労働契約法第5条で、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と、使用者の労働者に対する安全配慮義務(健康配慮義務)が明文化されています。


 労働者が怪我をしたのが、使用者がこの安全配慮義務に違反したことが原因であれば、損害賠償をしなければなりません。

 この損害賠償責任は、従業員が労災給付を受けているか否かと関係なく負う責任です。実際には、労災給付の内容と、損害賠償の範囲とは重複するものもありますので、その点について調整されるべき部分はありますが、この点については別に説明します。

 本件では、より詳細な事実確認は必要ですが、怪我の原因が設備の整備不良ということですので、貴社が安全配慮義務に違反したと判断される可能性が極めて高いです。したがって、怪我をした従業員が労災給付を受けていようとも、貴社は損害を賠償しなければならないことになります。

使用者に対する民事訴訟に関する労務等、いつでもお気軽にご相談ください。

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