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時間外労働等の割増賃金:残業代請求の実務

裁判になった場合、正確な終業時刻が記載されていないタイムカードを前提に残業代を計算することになってしまうのでしょうか?

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更新日:2021.05.28

ご質問

先般当社を退職した従業員の弁護士から、残業代を請求するという書面が届きました。残業代の計算にあたっては、タイムカードに打刻された始業時刻と終業時刻を根拠としているようです。

しかし、その従業員は、仕事が終わっているにもかかわらず、タイムカードを打刻しないまま、会社に残っておしゃべりをしたり、喫煙をしたり、他の従業員を待ったりしていたので、タイムカードに打刻されている終業時刻は、正確な終業時刻ではありません。

弁護士からの書面には、残業代を支払わないならば、裁判をすると書かれていました。裁判になった場合、正確な終業時刻が記載されていないタイムカードを前提に残業代を計算することになってしまうのでしょうか。



回答:

 結論としては、裁判になった場合、裁判所はタイムカードに打刻された時刻を前提に残業代を計算することが多いといえます。タイムカードに打刻されている時間が、実際の労働時間とは大きく異なるとしても、そのことを基礎づける説得力のある証拠がない限り、タイムカードが示す労働時間を覆すことは難しいのが実情です。

 

 裁判所は、事実を認定し、これに法律を適用して判断をします。そして、事実を認定する際の資料となるのが証拠ですが、関係者の証言などの証拠よりも、記録として残されている書類などの証拠の方が正確であると考える傾向があります。

 そして、出退勤の記録についていえば、タイムカードやICカードでの記録は、機械的正確性があるため、出退勤時刻を正確に示しているものであると評価されやすく、これに基づいて残業代計算の基礎となる労働時間(終業時刻)を推認するのが裁判例の傾向となっています。

 したがって、タイムカードが示す労働時間が実際の労働時間を正しく示していないと反論するためには、かなり説得力のある証拠が必要となります。例えば、自宅に帰ったり、業務に関係のない外出をしていたというようなことを主張するだけでは足りず、間違いなさそうだと思わせるだけの証拠が必要となります。そのような証拠を揃えられなければ、タイムカードに基づいて労働時間が認定されてしまう可能性は高いです。


 このような紛争を防止するためには、日頃からタイムカードの打刻時間を定期的に確認し、おかしな時間に打刻されていないかを点検するようにして下さい。また、従業員が業務を終えたにもかかわらず、タイムカードを打刻しないまま会社に残っている場合には、指導して改善させるとともに、指導の記録を作成して保管するようにして下さい。


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