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ハラスメント

上司から新人への必要な厳しさは、パワハラになるのでしょうか?

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更新日:2019.10.25

ご質問:

当社で、ある新人が、上司からパワハラを受けているとのクレームがありました。話を聞いてみると、厳しい指導ではあるものの、必要な厳しさで、パワハラなどにはならないと思っています。そもそも、どのようなことがパワハラとなるのでしょうか。

回答:

1.パワハラとは?

 職場におけるパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、①職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、②業務の適正な範囲を超えて、③精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為のことです。

①職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性

 典型的には、上司が部下に対して、あるいは、先輩が後輩に対していじめや嫌がらせを行うときに問題となります。しかし、職場内での優位性というのは、組織上の上下関係に限られるものではありません。近年は、部下から上司に対するいじめや嫌がらせという、逆パワハラの問題も良く耳にします。例えば、子供の頃からコンピュータに慣れ親しんできた若手社員がコンピュータに不慣れな上司を笑い物にするなどのいじめや嫌がらせをした場合も含まれます。

②業務の適正な範囲を超える

 業務の適正な範囲で行われる指示・指導・業務命令・注意などはパワハラとはなりません。しかし、業務の適正な範囲で行われているかどうかということは、非常に判断が難しく、この点がパワハラトラブルで良く問題となります。そして、多くのパワハラトラブルでは、行為が業務上の指導や注意として行われていることが多いため、適正な範囲であったかどうかを判断しなければなりません。

③精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為

 多くのパワハラトラブルでは、被害を受けたと主張する者から、「暴行を受けた」「精神科に通うようになった」などの精神的・身体的被害が主張されます。行為者は、「そんなつもりはなかった」「成長してもらいたいとの親心からの指導だった」などと説明することがありますが、精神的・身体的苦痛を与える行為であれば、パワハラになる可能性があります。

 また、この要件については、多くの場合、問題行為が継続的に行われたことが必要となります。例えば、一回怒鳴っただけでは、パワハラと評価できないことが多いでしょう。

2.パワハラの行為類型

 以下のような行為がパワハラ行為となります。以下は、厚生労働省が典型的なパワハラ行為として6類型に整理したものであり、これらに限られるということではありませんし、以下に掲げられているような行為であれば常にパワハラ行為となるということでもありません。裁判では、それぞれの行為の背景やその他の行為等の個別具体的な事情を踏まえた上で、パワハラ行為であるか否かを判断しているからです。

① 身体的侵害

  殴る、蹴る、定規で頭を叩くなどの暴力や傷害のことです。裁判例では、唾を吐きかける行為もパワハラ行為とされています(但し、他のパワハラ行為もあったケースです)。

②精神的侵害

 脅迫、侮辱、暴言などの精神的攻撃のことです。パワハラと主張されるケースの多くは、うつ病になってしまったとか、精神科・心療内科に通うようになってしまったとして、精神的侵害を受けたことが主張されています。裁判例では、上司が、相手となる部下、さらに同じ職場の従業員十数人に対して、次のメールを送ったことを、パワハラ行為としています(但し、地方裁判所の段階ではパワハラ行為とは認めず、高等裁判所の段階でパワハラ行為と認めたものです)。 「意欲がない、やる気がないなら、会社を辞めるべきだと思います。当SCにとっても、会社にとっても損失そのものです。あなたの給料で業務職が何人雇えると思いますか。あなたの仕事なら業務職でも数倍の業績を挙げていますよ。(中略)業務審査といい、これ以上、当SCに迷惑をかけないで下さい。」

③人間関係からの切り離し

 無視をする、一人だけ隔離した場所で仕事をさせる、アドバイスを求められても教えない、職場の飲み会などに誘わないなどの仲間はずれにするような行為も、パワハラに該当する可能性があります。裁判例では、(他のパワハラ行為とともに)新人を近づけさせない、挨拶しても返さないなどの行為がのけ者にするようないじめであるとしてパワハラ行為とされたケースがあります。

④過大な要求

 業務上明らかに達成不可能なノルマを課すような場合です。裁判例では、先輩が後輩に対して、他の作業員らの終わっていない仕事を押しつけて、ひとり深夜遅くまで残業させたり、徹夜で仕事をさせたりしていたという行為が、他の行為と併せてパワハラ行為と認定されています。

⑤過小な要求

 ④とは逆に、ほとんど仕事らしい仕事をさせない、程度の低い単調な作業を与え続けるということも、パワハラに該当する可能性があります。会社が退職させたい従業員を配置転換させて、仕事を回さないような場合です。

⑥個の侵害

 プライベートな内容に過剰に踏み入ってくる行為も、相手に精神的苦痛を与えたり職場環境を害することがあればパワハラとなる可能性があります。裁判例では、部下が自宅の家主との間で賃貸借トラブル(退去を求められた)が生じていたところ、家主と知り合いであった上司が、左遷など人事上の不利益取扱いもほのめかしながら明け渡しを繰り返し迫った 行為が、パワハラ行為と認定されています。

3.パワハラ行為が生じる一つの要因-認識の乖離

 日本大学アメリカンフットボール部の悪質タックル問題がニュースやワイドショーなどで連日報道されていました。日大側の主張は、悪質タックルは監督らが指示したものではなく、「指導と指導を受ける側の認識の乖離(かいり)」が原因であったと主張しています。

 悪質タックル問題の真実がなんであったかはともかく、この「認識の乖離」というのは、パワハラ行為が生じる大きな一つの要因であるといえます。高度経済成長期を経験し、自らが「モーレツ社員」であった世代の方からすれば、部下を叱責したり、厳しいノルマが課されるのは当然のことであり、パワハラ行為になるなどと考えもしないでしょう。

 そのような世代でなくとも、若手社員のころに、上司から毎日のように怒鳴られても歯をくいしばってきた結果、「今になると、あれがあったから成長できたので感謝している」と過去を良い経験と思い返すことができている方は少なくないはずです。

 そういった方々が、自分が受けてきたような指導等を部下に対して行った場合、パワハラ行為になりかねません。上司としては、それが部下のためであっても、部下にとっては、そのような思いを認識できず、仮に認識できたとしても辛い毎日であることに変わりはありません。それを良い経験とできるのは乗り越えて振り返った時(かつ、成長や成功できた時)であって、「今」、辛い毎日を送っている部下は、良い経験ととらえることなどできません。 上司が、「認識の乖離」が避けられないものであることを理解して、相手に配慮して行動するだけで、多くのパワハラトラブルは解消できるはずです。

ご相談内容について

 どのような行為がパワハラ行為になるかは、これまで説明してきました。ご相談では、話をよく聞いてみると、厳しい指導ではあるものの、必要な厳しさで、パワハラなどにはならないと思っているとのことです。しかし、その考えも、「認識の乖離」によるもので、誤った考えかもしれません。
 具体的に、どのような行為が行われていたのかを、当事者や周りの方から詳しく聞き取った上で、弁護士などの第三者に相談することをお勧めします。

ハラスメントに関する労務等、いつでもお気軽にご相談ください。